William G. Pierpont N0HFF
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改訂2版-第3章
基礎を身につける‐パート2
時間的に遅れる認識と瞬間的な認識
ここに2つの重要なことが含まれています。
これがFarnsworth(ファーンズワース)法と言われる方法が使われている理由です。その方法とは文字間の間隔を最初は非常に広くとり、段々と標準の間隔に狭めていくのです。以上の2つの方法を組み合わせることにより、音のパターンは短点と長点によって構成されているということを理解していながら、その短点や長点を解読しようとか、数えようとか、自分からは絶対にしないということにやがて気づくのです。
私達はまず最初にその文字が何で構成されているか意識的に全く考えないで、心の中(頭の中)で完全な文字として受け入れられるまでは、一字一字に注意を払って聴かなければいけません。短点と長点のことについては忘れて、音のパターン・リズムを聴くだけなのです。つまり、耳の一瞬は目の一瞬よりもちょっと時間がかかります。前後の音のパターンを分離する長めの間隔のため、その耳の一瞬で、一つ一つの音のパターンを区別して聴くことができるのです。
間隔は大変重要です。この間隔が音のパターンを際立たせます。文字の音パターンまたはリズムは短時間の間に1つの完全なものとして聴かれるのです。パターンを構成する全てを聴き、完全な1つのパターンとして聴き終えるまでは認識することができないのです。符号を識別することができるためには、その前に、その符号のパターンを完全に聴き終えなければならないのです。音のパターンが頭のなかに定着したなら、速度を速めたり遅くしたりして、文字を受信してみるのも良いでしょう。
正確なモールス符号だけを聴きなさい
最初の段階においては、探し出せる範囲の中の最も正確な符号だけを聞くということが大変重要です。耳と心が正確なリズムパターンに慣れることが必要です。乱れた符号は、なまった不確かなリズムとなり、学習者の心を混乱させ習得を遅らせがちにします。めちゃくちゃな符号を聴いて本当の高速受信をマスターしようなどと期待してはいけません。下手に送られた無線の電信符号を聴くと、学習者は時々失望してしまいます。なぜなら、符号を符号全体として捉えるのではなく、符号の細部について意識的に考えさせられてしまい、心が集中できないからです。ゆっくり(着実に)学習しなければなりません。下手に送られてくる符号を聴くと学習プロセスが寸断されます。(後になれば、技術が上達して、下手な符号もほとんど理解できるようになるでしょう。しかし、今は避けるべきです。)これは、送るタイミングを体得するまでは、自分で符号を送信すべきでないという理由にもなっています。
さあ、はじめよう
モールス符号を学びたいという人に符号を紹介するにはいくつかの方法があります。入門者へ好ましい印象を与えるための大変効果的な方法の1つとして、次のようものがあります。20WPM位の速度で各単語を普通の文字でスペルアウトしながら、文を1つか2つ書き取るのです。 例えば:
YOU ARE GOING TO FIND IT IS EASY TO LEARN THE MORSE CODE.
(モールス符号の習得はやさしいということに気付くでしょう)
そして講師は、モールス符号を学んでいくにつれて、同じように受信して書き取ることができますよと受講者を安心させます。「これから私達がやろうとしていることは文字の名前を変えることです。例えば、Yという字の代りに、ツートツーツーという音になるのです。」などのようにです。これで受講者は最初の数文字を音によって学ぶ準備ができるのです。
ほとんど誰でも20
WPMで送られる単語については、違いがすぐ認識できるため、最初の練習を始める上で有効な他の方法として、単語識別の練習があります。つまり、Hiやさようならを意味する73のような単純な単語や挨拶を送信するのです。各々の単語を20WPM位の速さで6回位、誰もがそのサウンドに慣れるまで送信します。そして、今度は先ほど送った複数の単語を混ぜてランダムに送り、受講者たちにその単語を当てさせるのです。次に今度は先ほどとは異なるtheのような単語を加え、受講者たちの反応を確かめます。そして、その単語が何なのか教えてやり、更に何回か送信するのです。このやり方は受講者の学ぶ意欲を刺激することができます。また、異なった音のパターンに本当にそれぞれ意味があるということを理解するのは難しくないと示すことができます。音のパターンを区別できないと心配している人にとっては、先ず、VとBを交互に送り、音による比較をさせるのが良いと勧める人もいます。
言うまでもなく、文字が完全にまとまった音のパターンとして聞こえるよう、十分早い速度で聞くことが大切です。そして、できれば最初に全く異なった音のパターンを持つ文字を同じレッスンの中で聞かせ、学習者に文字を比べようとさせないことです。
おそらく講師のほとんどは授業形態のレッスン場合、2番目の方法を選ぶと思われます。実例しては次のようなものがあります。
A.講師が「これがFです。」と言い、そしてFを送信します。そして、また続けます。「さあ、もう一度送ります。聞こえる度に鉛筆で書きなさい」。講師は次の文字へ進む前に、間隔を数秒空けて何度もこれを繰り返します。そして次の文字は最初の文字とは大分異なるリズムパターンを持つもの(例えばG)を選び、同様な方法で教えます。それから、今までに教えた2文字をランダムに送信し、生徒が95パーセント位の割合で正しく受信できるまで続けます。次に講師は3番目の文字を紹介し、その後、今までに覚えた文字をまたランダムに送信します。これを繰り返し1回の授業で大体6文字位を教えますが、生徒の多くは混乱したり疲れたり飽きたりせずに練習をこなせます。 注意:各自が普段どおりの書き方で紙に書くことが大切です。
B.講師は短点を送信し、こう言います。「これが短点、トンです。これは文字のEです。ではもう一度送ります。受信する度に紙に書きなさい。トンであることを忘れなさい。これは文字Eです。」。そして講師は生徒がほとんど自動的(反射的)にEと書き写すようになるまで何度もEを送信します。そして続いて「それでは今度はIです。聞いてください」。講師はIを送り、こう続けます「これはIです。さあ、もう一度送ります。受信したら書きなさい」。このようにして複数の文字を練習します。新しい文字の練習が終わったら今までに覚えた全ての文字を使って、ランダムに受信する練習を行います。最後に、一番最初のレッスンとしても、短い単語が作れるような文字を選んで練習したはずですから、今度は次のように言って単語を送信します。「さあ、今度は単語です。先ほどやったように文字を書きなさい」。講師はクラスの生徒が書き写す間、少し待ち、そして続けます。「さあ、皆さん、コピーした単語は
でしたね」。こうした練習をレッスンの最後まで続け、最初のレッスン(30分~40分)が終わります。これ以降のレッスンもこのパターンで練習を行い、アルファベットの全てが終わるまで続けます。