無線電信の巧みと技

William G.Pierpont N0HFF

-改訂2版-

第16章 その他の方法

 

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自学習の為のパーソナルコンピュータとキーボード
PCとキーボードは符号を聞取り該当するキーを打込んでリズミカルな受信能力を高める練習やスクリーンをプリントして練習結果を確認するなど自学習に適し、あたかも個人教授や教室で学習するのと同じような価値の高いツールといえるでしょう。具体的には、

優れた多くのコンピュータプログラムについて
 第18章 でも記述していますが、数ある教習用プログラムの中には依然としてコモドアールとアップルコンピュータ用のものも存在しています。しかし殆どのものはIBMコンパチPC用です。それらは教習生の技量に応じた様々なプログラムが存在しコード学習の指導経験とプログラミング技巧の粋を結集したものばかりです。その多くはコンピュータと符号送出機能が接続されキーボードを用いた送信技量の評価機能も備わっています

 学習を効率よく進める為に重要な事柄として教習生の技量に応じた学習内容の適応度と教習プログラムとのやり取りの頻度が考えられます。それらはどれぐらい柔軟性に富んでいるのでしょうか。また教習過程における技能状況と正確性をチェック出来るでしょうか?ある双方向教習プログラム(Gary Bold氏作)の教習初期段階の様子を例にあげてみると、まず教習生はプログラムから送信される符号を聞き取りそれに対応する文字のキーをキーボードから入力します。その際彼が正しい符号認識をすればPCのスクリーンにその文字が表示され、間違った認識をすればそのキー入力は無効となり、正しい認識が行われるまで繰り返されます。そしてその符号が確実に体得できるように何度も繰り返されてから次の新しい符号の学習に進みます。もしプログラムの送出するタイミングより遅れた応答をした場合、まだ修練度が足らないと判断され何度もその文字が繰り返されて送出されます。

 新しい符号の出現数を指定すると、無作為の順序で指定した数の符号が繰り返し送出され、もしひとつでもミスをすると正しい認識を行うまで繰り返されます。すなわち教習生が誤認識する頻度に比例して正しく認識できるよう次の一連の符号を正確に送出し誤認識率が明らかに低くなるまで繰り返します。多くのプログラムは教習初期段階から終了過程に至るまでの大量の練習素材を備えていて、個々の要求を満たしながら符号を速習する上でまさに万能なツールと言え、中でもキーボードの存在は重要で教習プログラムの持つ機能を十分に発揮するため多くの要因を担っています。したがってポケットサイズのコンピュータ(のキーボード)では役不足でせいぜい(そのPCは)ヒヤリング程度しか用いられないでしょう。
 

ヒヤリング能力を向上させるには
 オールドタイマの W1NJM George Hartは独特な符号の習得をしたひとりです。ライセンスの取得あるいは符号を習得する意志の有無にも拘わらずHamであった彼の兄の影響から単に聴くだけで浸透するように符号を習得した、と語っています。というのも彼がしばしば書簡の伝送操作に馴染んでいたので符号通信が出来る事を自覚した時には既に符号は彼のものになっていたのです。彼は後にこう書いています。”わしゃ産まれたときにゃもうキー(電鍵)を握っていたんじゃ。CWは喋るのと同じさ、自然に備わったもんじゃよ”
 

高速符号を聴くことによる練習
往年の何人かの
Ham達は符号を習得するには商業通信社の発信する高速な符号伝送(3545wpm)を入門時から聴くのが良い、などと語っていました。それは昼ともなく夜ともなく常に受信できたのです(しかしそう言う彼ら自身は実際にやってみて効果があったのでしょうか?実際にどのように学習したのかもよく解りません)。短い語句を用いてやり取りしている書簡を見分け2ヶ月もすれば自然にその内容を認識出来るようになる、と彼らは断言していました。しかし実際にこの方法はとても効果的だとは思えません。実際に行ってみると--熱意だけではなく入門者としての精神的影響も大きいのでしょう--殆どの場合自信が無くなります。本書ではこういう方法ではなく実際に教習上効果のある事柄を十分吟味して解説してます。
 

認識速度を上げる為の更なる解説
 多くの符号教習プログラムでは、テープだけではなくプログラム可能なキーボードとキーヤ機能、幾つかの魅力的な補助機能が備わっています。これらを利用して教材を個々の要求に応じてより使いやすく設定することが出来ます。ファーンズワース(Farnsworth)方式では高速な符号、語句を頭の中で読みこなすことに重きをおき、符号間、語句間を広目にした5060wpmの符号速度で教習を開始し、教習が進むにつれて徐々にそのスペース間隔を短くしていき、高速な符号認識技能が身につくように教導します。
 

睡眠学習(??)
 闇雲に自分の受信能力を向上させようと必死だった過去の通信士の多くは、彼らが寝ている時でも寝台の傍に高速符号信号を受信している受信機或いは記録装置(陸上通信士の場合には有線電信受信機)を数時間あるいは一晩中つけっぱなしで置いていました。彼らは短期間で驚異的な受信能力を身につける事を熱望していました。この訓練法はかなり長く続けられていて実際に多くの人々に効果があったようです。

 あるHam70wpmの受信能力を持っていましたが、更にそれ以上の能力を身につけることを熱望しこの訓練法を数年間毎晩行っていました。多分多くの人々が同じ様にしていたのでしょう。私はこの訓練法が実際に効果的であるか、また彼らが十分な睡眠を得られたのか断定できません。しかし興味深いのは1920年代初期にある医師達のグループがモールス符号を使う訓練をさせられていて、彼らの指導者は彼らに”睡眠学習”を試み、夜彼らが寝ている最中に”doctor"という語を送った際に彼らが常に素早く目を覚ます--無意識に外部からの信号を理解し反応する某かの精神的作用が存在する--ことを発見したのです。
 

もう一つの成功事例
 ある日私のところにGeneral級の試験で要求される13wpmの受信能力を身につけるにはどうすれば良いかと相談してきた方がいたなら、私は次のような具体的な練習プランを提案をします。

「毎日正しく奇麗な符号の送信を聴き慣れる必要があります。それには(ARRLから発信されている)W1AW CW Bulletins を聴く事をお勧めします。それは18wpmで送信されています。最初の数日は1分間だけ聴いて下さい。そして1分経ったら止めてください。聴いている間はあなたが認識できる符号だけをピックアウトして下さい。その際決して何も書き留めないで下さい。23日後、今度は聴く時間を2分間に延ばします。この時もあなたが認識出来る符号を頭の中で拾い上げる様にし、まだ何も書き留めない様にします。 そして2分経ったら止めて下さい。この練習を始めて8日から10日経ったなら、今度は聞く時間を1分に戻して認識した符号を総て紙に書きとめるようにして練習して下さい。もし解らない符号があったらそこだけ空けておきます。そして1分間あなたが認識した符号を総て書き留めるように頑張ってみて下さい。そして1分経ったら止めます。これを数日繰り返して下さい。そして今度は聴く時間を2分に延ばし、認識した符号をすべて書き留めて下さい。数日或いは1週間この練習を行ってみると、集中力が高まり急速に識別能力が高まったことに気づいて短期間の内に符号をコピー出来るようになった事に驚くと思います。そしてこの段階から34567分と1分単位で徐々に聴き取る時間を延ばして練習を行って下さい。Bulletinの約6割がコピーできるようになったら13wpmの符号を取れる能力を獲得できた事になりますから試験は無事パスできるでしょう。この練習方法は5から10wpmの速度が限界でそれ以上能力を伸ばすことが出来ずにいる人にも効果があります。また20wpm以上の速度での能力獲得を目標としている場合にも有用な練習方法ですよ。」

McElroy's McElroyの学習過程と主張
 この章で説明した様々な事柄には該当しないのですが、1945年の11月のQST誌の115ページに掲載された"あなた自身が思うがままに好きなだけ試すことが出来るMxElroyのモールス符号教習コースの総てをお送りします”という見出しのTed McElroy's Companyの広告内容をここで紹介します。それは、”30年にわたる実務経験で得た何もかも”を含んでいると謳っていました。そして”練習を始めた最初の日に通常数時間練習すると仮定すると、我々の提供するコースではなんと最初の1日目で20wpmで単語や文をコピーできるようになります。なんて独創的でしょう!Tedが定義したChartNo.1の文字体系の全体ないし半分を用いた20wpmの符号が1時間程流れる教習テープが用意されています。多分1分間で20語は取れないでしょう。しかしテープの最初の方は符号間隔が広くなっていてテープが巻き上がっていくにつれ段々とその間隔が短くなっていきます。耳に入った20wpmの符号を書取って練習して下さい。”と説明していました。Tedの受信速度記録はどの公式スピードコンテストでもトップでしたので、この資料を読むととても興味深く感じます。現在でもこの練習方法は役立つでしょう。
 

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