無線電信の巧みと技

William G.Pierpont N0HFF

-改訂2版-

第11章‐技をさらに磨く

 

第10章    目次    第12章
 

CWを理解するというのは、断続する音を理解できる「言葉」として認識することを学ぶプロセスを指します
 コードをコードとしてではなく、「内容」として考えられるようになったときに真の技術が始まります。すばらしいオペレーターというのは、コードによく慣れていて、またその扱いにもたけた人を指すのです。そして、
1525wpmで送られてくるコードを正確にコピーすることができ、電信コードで考え、話すことのできる人です。また、時には3035wpmのスピードで普通の言葉のように扱うこともできます。(「会話調のCW」のことを「ラグチュー」とうまく表現した先生がいます)

 これは、すべてのオペレーターにとって最低限の希望であることに違いありません。なぜならば、そのようになれば楽しく快適な作業となるからです。会話を楽しみ、さらに何の緊張もプレッシャーも感じることもなく(誰でもマイクに向かって話すことができるのと同じように)それができるのです。 不必要な言葉を省略し、共通の略語、例えばQ符号を使うことにより、会話のスピードは快適なものと感じるのに十分な程度にまであがります。そして、モールスコードで話すことに何の特別な障害も感じなくなります。実際、使い慣れない言葉や見慣れない言葉、あるいは固有名詞であれば、読んだり書いたりするときと同じように、一字一字つずったり探ろうとしたりします。しかし、たいていの場合は、言葉を言葉として聞くことができるでしょう。なぜならば、すでに熟練しているからです。熟練したオペレーターにとって、言葉はアルファベットのようなものなのです。
 

高度な技術
熟練した人たちのことを述べるとき、このようなスピードでコードを理解(read)することとコピー(copy)することの相違について論じる必要があります。電信の歴史をとおして、すべての熟練したオペレーターが「書き留めることよりも全体を理解することの方がはやい」と言っています。手であろうとタイプライターを使おうと、書くことよりも早くコピーすることなどできないことは明らかです。

 コピーすることに関しては、すでに述べました。本章では、理解する技術について再び述べたいと思います。ここでは基本的に、より高度な技術を持ったアマチュアについて述べます。それは、商業上のあるいは職業的理由からではなく、単にそのように望むからです。全くの楽しみのため、あるいは心の中にある衝動を満足させるためでしょう。しかし理由が何であれ、そのような技術は他の技術と同じように価値あるものです。そして、楽しむことができるのと同時に役にも立つという意味からも、他の技術以上のものかもしれません。このようになるには、動機ずけが必要ですが、前述の理由で十分のはずです。

 非常に速いスピードで送られてくるコードの中から一語でも何とか理解できた、という満足感が、このようなスピードですべてを理解できるようになりたいという気持ちを引き起こすことはないでしょうか。高速CWの喜びは、このバンドにどんな特別な世界が存在するのかを知ろうとする時間を進んで作る人だけにしかわかりません。このような、プロに近いオペレーターたちは、努力しないで理解したりコピーしたりするので、実にリラックスしています。他に何かしているときでさえも理解することができることを知っているということについては疑う余地はありません。何をしていても、熟練したオペレーターは、聞こえてくるコードが言わんとしていることがわかるのです。話している言葉を聞いているかのように理解するのです。そして、必要ならば後で書き留めることもできるくらい思い起こすこともできるでしょう。

以下に示のは興味深い例えです。
 高速オペレーターたちが
SSBで行うローカルネットで、管理者が「ゲーリー、SSBでもうまくできるかい」と尋ねたところ、少し間をおいて誰かが「ゲーリー、おまえにSSBで話しかけているよ」と言いました。「ああ、そうだったね。」とカービーが言いました。熟練したオペレーターにとって、モールスは第2の天性なので、モールスで考えることを止めて、実際に使っているモードが何かを考えなければならないのです。このような経験を初めてした人はきっと驚くでしょう。
 

高速CWが待ち望んでいたのはエレクトロニクス
 高速のCWは正確さを必要とします。しかし、マイクロプロセッサーでコントロールできるキーボードを用いたデジタル通信が可能となるまでは、多くのオペレーターたちにとっては現実的ではありませんでした。しかし、手頃な価格でこれを使うことができるようになったため、高速CWを楽しむために重要な2つの要因が可能となりました。この2つとは正確性(これは、いつでも重要な要素であり、決してスピードの犠牲にすることはできないものですが)とスピードです。

 40wpm以上のスピードになると、機械装置では正確なコードを送り続けることは不可能でしたが、キーボードを用いると簡単にできます。さらに、例えば記憶装置などを用いることによってCWによる会話は非常に楽にできるようになりました。その結果、今までは独り言を送信するようなものだったものが、お互い会話することができるようになりました。人間の知力というものは、モールスコードをコピーすることにかけてはどんなコンピューターよりも優れています。そして、熟練したオペレーターが送ってくる正確なCWを聞くことから送信する喜びが生まれてくるのです。送信する装置が何であるかなど問題ではありません。要は、正確に送ることができるかどうかなのです。CWをコピーするのは心であり、喜びをみつけるのは頭です。
 

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技術を習得する過程には
4段階あると言われています。

 思い出して下さい。最初はトン・ツーを聞くのではなく音の単位として文字を聞くことを学ぶ段階でした。次の段階では、文字の羅列としてではなく、たくさんの良く使う言葉(word)や言葉の一部分を一つの単位として聞きます。この段階では、トン・ツーをほとんど認識することができ、基礎ができたことに対する自信もわいてきます。ここまでは、心地よく感じるでしょう。

 トン・ツーの構成要素を聞くことができる時期を過ぎたら、もう3段階目に達しています。コードが霞に中に突然、消えていくように思えるでしょう。(しかし、文字がそこに存在するという意識は持つべきです。) 最初は助けとなるものがどういう訳か消え去ってしまったかのように思え、頼りなく感じる人もいるでしょう。しかし、正しい練習法で十分に訓練された自然の心の働きによって、何も緊張することなく、トン・ツーの構成要素を聞き取ることができ、また文字を認識できるでしょう。(自然の心の働きは、いつまで続くかは知りませんが、いつも活発な状態にあります。)今、学ばなければならないことは、たとえどのように心が働くかはわからなくても、その心の働きを信じることなのです。

 私達が習得した技術に関しては、「スピードに関しては、意識的に努力することが不可欠です」と一般的に言われています。「考えたり、本能に頼ることを止めた瞬間、このような特別な技術を失うことになるでしょう。」初心者は、20wpmでコードが伝達されれば、おそらく「こんなもの、理解したりコピーしたりなんてできない」と言うと思われます。しかし、2,3週間の訓練でできるようになるのです。高速でコードが送られてくると、早すぎて理解することなどできないと思われるでしょう。しかし、訓練されていない耳に響く早さとは違います。問題の大部分は、こんな早さでは理解することなんか不可能だという印象をなくすことができるかどうかということなのです。他の人ができるのなら、きっと自分もできるでしょう。というのは明らかな事実なのです。だから、気を取り直しましょう。録音された会話は、それが倍の速度であるいは半分の速度で再生されても、音の調子だけでなく、響きも乱れているために理解することは困難であるということはわかっています。

 モールスコードに関して言えば、これは間違っています。コードで重要な音の割合が厳密に維持されていればそのパターンはそのまま存在するのです。熟練したオペレーターは、かなり広い範囲のスピードで送られてくるコードを理解し、コピーすることを学ぶ必要があります。
 
Ted McElroyがかつて言いました。「もし高速で送られてくるコードの中で1語でも理解することができるのなら、そのまま先へ進んで下さい」と。もし希望を持っているのなら、気を取り直しましょう。聞こえてくる個々の言葉に集中し、理解することで目一杯に近い状態の時には、下手に送られてきたり、妨害されたり、間違って送られてきたりする言葉を理解する余裕はなくなります。しかし、もしスピードにまだ十分な余裕があるようであれば、すべてが簡単でより楽しむことができるようになります。

 よりゆっくりしたスピードであれば、言葉の意味を考えることができます。なぜならば、送られてくる言葉についてよく考える時間があるからです。(送り手に変わることはできませんが。)初めの頃は、一生懸命になりすぎていました。特に未熟な時には、心の中で受信能力をコントロールしようとしています。しかし一方で、心の自然な部分では「君の妨害がなければ自分でうまくできるのに」と言いたがっているのです。このような心の中の葛藤は止めなければなりません。また、受信能力をコントロールしようとする意識も取り除かなければなりません。どんどん進みましょう。そうすれば無意識のうちに、心は機能するものなのです。うまくなればなるほど努力しなくてもよくなるものですし、上達も早いものです。

 ある生徒がこんなことを言いました。「受信を開始した直後で100%神経を集中できているときのスピードは本当に遅いものでした。ところが、疲れてしまったときに今でのベストが出せたのです。」この言葉の中に、これからどのように進んでいけばよいのかというヒントが隠れていませんか。(なお、この言葉は、音と文字に全神経を集中させなくてはならない習い初めの生徒のものではありません。高速受信を目標にしている人の言葉です。)
 

熟練したオペレーター
 昔、ある通信技師が
13wpmの速度で行われるGeneral Classのハムの試験を受けました。そのとき、彼は鉛筆を置いて「こんなものコピーできません。」と言いました。そして、なぜかと聞かれたことに対して「遅すぎるから」と答えたのです。周りの人は笑いました。それからスピードはかなり上げられ、彼はすべてコピーすることができたのです。引き延ばしたようなコードは非常に理解しずらいものです。およそ12wpm以下だとパターンが失われてしまうからです。
 

早く、早く、早く?
 上達した人は
40wpmか、もう少し早いスピードで苦労することなく競争します。そのようなスピードは我々には早すぎて、ほとんど理解できないか、できても数語に限られます。昔であれば、このようなスピードで受信可能な人たちほとんどがプロでした。しかし、今ではその多くはハムなのです。

今ではもう亡くなりましたが、あるOTは(彼はアマチュアとして始め、それからしばらくの間は職業にしていました)、何の失敗もなく4050wpmでコピーすることができました。そして、50wpmくらいまでは容易に理解することができたのでした。彼はハムとして、いつも考えや意味を聞き取り、実際に送られてくる言葉(word)には注意を払っていませんと言っていました。(ある日、QSOの後で彼に質問したときのことです。「W8xxxが使っていた言葉(word)は何でしたっけ?」、彼はわかりませんでした。これこそが達人の達人たる所以ではないでしょうか。)

 60wpm程度の高速で受信可能な達人もいますし、中には100125wpmでも理解できる超達人がいます(その内の一人に、真空管の設計・製作会社であるEitel-McCulloughの有名なBill Eitelがいました)。これらのツワモノたちの中には、スピードの関しては上限なんてまったく感じないという人もいました。普通の人にはおそらく騒音にしか聞こえなのでしょうけれど。(おそらく、トン・ツーを聞き取ろうという考えさえうかばないでしょう。)しかし、彼の心の中の自然に機能する部分が活動的でうまく機能している間は、容易に理解することができ、また何を言わんとしているかがわかるのです。

 これらの競技を行うオペレーターたちと我々の違いはどこにあるのでしょう。彼らは我々よりも長いスパンで聞きます。理解する「グループ」即ち理解する単位が我々よりも長いのです。そして、コード、文字さらにおそらくは言葉までも意識的に考えていません。(下記および26章 スピードコンテスト参照)

 およそ45wpm以上になると、早すぎてトンとツーの違いを認識することができなくなります。しかし実際は、聴覚に障害があるのでなければ、このような早いスピードでも脳の自然な働きによってこれらの違いをかなり認識することができますし、正確にパターンの違いを識別することもできます。そして、言葉や意味という大きな絵のようなものが伝達されるのです。しかし、何らかの理由で細部までは認識できないのです。ここに記したオペレーターの経験が何よりの証拠です。
 

「理解(reading)」対「コピー(copying)
 多くの熟練した有線や無線の電信オペレーターは、
5060wpmで1日に1012時間、毎日、コピーしていたそうです。これは通信回線では一般的なことで、他の人たちも同様でした。(しかし、いくつかの疑問もあります。文字の数をおよそ40%にまで短くするフィリップスコードという省略法で受信しながら、実際の言葉の数にして5060wpmをタイプしていたのでしょうか。[27章参照] もしそうであれば、与えられたスピードで普通の英語をすべて受信するときよりも、実際はもっとゆっくりとしたコードのスピードだったのでしょう。)

4550wpmを超えるような早い速度では、理解することではなく、コピーすることですぐに、非常に疲れてしまいます。そして、長い時間は続けられません、と多くの 熟練者たちが言っています。彼らにとって、スピードが上がるにしたがって耳に聞こえるものを紙へ書き写すことは莫大な集中力を必要とするのです。つまり、心の中にある他のすべてのものを締め出してしまわなければならないのです。これはまるで催眠術にかけられたようなものだという人もいます。(2040wpmの速度での快適さとはまったく対照的です。なお、これは個人の技術レベルに依存することなのですが。)ほんのちょっと注意を怠ることで、まったくわからなくなってしまう可能性もあり得るのです。(コピー[copying]することについてはすでに第8章で述べましたので、ここではコードを理解[reading]することに限って述べたいと思います。)
 

音の壁
音を意識すること・・細部から意味へ
 およそ
60年前、公式のアマチュアスピードコンテスト終了後、彼自身もかつては電信技師であった審判員が、56wpmで優勝した若者に尋ねました。「君、理解できたのかい。」「はい、どうしてですか」。「いや、私に聞こえたのは、どこにもスペースさえないような音の塊だったからだよ。」判定は審判員の限界を超えていたのです。

 ‘Sound consciousness’という言葉は、コードの構成要素を意識的に区別できなくなる限界を言い表すのに用いられてきました。およそ50wpm付近のスピードで、トン・ツーを別々に判読することができなくなります。つまり、混ざって聞こえてくるのです。細部を理解することにこだわることを止め、また、もしコードを理解することを続けているのなら、受信するときの意識の中に明らかな変化が起こってくるはずです。音を意識することによって、文字から言葉やフレーズにギアを入れ直さなければなりません。

 この能力は、言葉(word)のレベル以下にある、すべての細かい部分(個々の長短点やアルファベットのこと)を取り去る(意識しないようになる)、心の自然な働きによって上達します。ですから、そのときから言葉、フレーズそして意味だけを意識するようになるのです。細部を意識するという欲求は遠ざけておく必要があります。
 

そのような技術はどのようにして身につければよいのでしょう
 ある人は以下のような方法で身につけました。
 
14wpmのスピードでほとんど完全にコピーできるようになったときに21wpmにテープのスピードを上げました。そうすると、すぐに60%程度を理解できることに驚きました。1日、15分間x3回の練習で、ほとんどミスすることなく、一連の文章の中の45語あるいはグループを理解できるようになりました。彼は2本のテープのあちこちを聞き、それらが非常に役に立つものだということを知りました。さらに早いスピードのテープを聞き続けることによって、およそ5ヶ月で35wpmもとれるようになりました。(多くの人はこれくらいのスピードですともっと早くとれるようになるのですが) 自分の現在持っている力の限界よりも10wpmもしくはそれ以上のスピードで聞いて下さい。そうすれば、聞くにつれすべてが理解できるかのように感じるでしょう。聞こえてくるものを理解しようと欲して下さい。

「超高速交信の中で一語でも聞き取ることができるのならそのまま進んで下さい。」という高速オペレーターがいます。「短い言葉から始めて順調に進んでいるのなら、もう、すでに前進しているのですよ。」繰り返し聞いて下さい。そして、聞いたことを理解しようとして下さい。練習する際のルールを思い出して下さい。疲れない程度のスピードで、短時間、そして再びもっとゆっくりとしたスピードに落として下さい。そうすれば非常に簡単に感じるでしょう。これらの通信技師たちの中には、高速で理解したりコピーしたりしていても快適ですし、何の緊張もストレスも感じませんという人もいます。また、どんなスピードで聞いていても、精神的な変化も何も感じないとも言います。さらに、このような高速スピードでは、トン・ツーを意識することはないし、文字やスペルなどはたまに意識するにすぎませんとも言っています。(このようなレベルではスペルを正す必要なんてないということです。)

 一般的ではない言葉、固有名詞、コールサイン、省略語などに振り回されることはありませんし、それに続く言葉を聞き逃したりもしません。さらに彼は付け加えます。「コードのスピードが早ければ早いほどいいのです」と。(高速でコピーすることに関していえば、「私はまず最初の文章を聞いて、そしてコピーを始めます」)このコメントに関しては、もう一人の専門家も同意しています。彼らは、6才になる前からエキスパートである親戚や友人の手ほどきを受けていたのでした。彼らはどんなスピードでも、本当に心地よく感じるのです。そして彼らは、スピードの上限はないと思っているのです。「私にとっても彼にとっても限界を見つけるとすれば、交信記録を紙で提出することでしょう。すなわち、コピーすることが唯一の限界なのです。」(彼らがそんなに快適に感じる理由のひとつには、小さい頃から始めたということがあるのでしょうか。この点に関してはさらに情報が必要です。)

 もう一人のエキスパートがこの技術について次のように述べています。「高速では音がかすんで聞こえると言うでしょう。これは私もそうだったのです。つまり、初めは、コードがまるで熱いフライパンの上ではねるポップコーンや鳥の脂の音のように聞こえていたのです。そして、その音の壁を破り、理解できるようになるまでは集中しなければなりませんでした。気持ちをのめり込ませ、言葉やフレーズに集中するのです。それから突然、言葉やフレーズが私の中に入ってくるようになり、どんどん進歩していきました。そして、意識的に集中力を維持している間は、頭の中で理解し続けることができたのです。それも、それほどの緊張も伴わないで。さらに、しっかりと集中力を維持していれば、聞き漏らしてしまうということ(受信している状態からの脱落)はありませんでした。」

 しかし、時には聞き漏らすことがあったことは彼も認めています。例えば、難しい言葉や一般的ではない言葉、あるいはスペルが間違っているときなどに。しかし彼は聞き続けました。考えている暇などないのです。このことは次に記すことを示しています。つまり、送られてくることに意識を集中させるという気持ちに自分の心を移動させ、その集中力を何の緊張もなしに意識して持続させるという必要性を感じているのです。彼は、次のような考えも示しています。あなたが新聞を読みながら、一方でラジオのニュースも聞いているのでしたら、どちらかに注意を傾けているはずです。それが新聞であれば、ラジオは多かれ少なかれ単なる音として聞こえているだけでしょう。また、ラジオを聞きたいと思えば、注意をラジオに向けなければなりません。そうすると、単なる音として聞こえていたものが意味あるものに聞こえてくるでしょう。高速コードを真剣に行うというのは、このようなことをいうのかもしれません。

 Ted McElroyLevon R. McDonaldは第二次世界大戦以前に75wpmでコピーしていました。数年後、Frank J. ElliottoJames Ralph Grehamは同じ程度の技術力を持っていました。これに続く技術を持った人もいました。スピードコンテストには出ていませんが、彼と同じかあるいはそれ以上の技術を持っている人はたくさんいるとMcElroyは言っていました。
 
George Hartは次のように言っていました。「もし、生まれたときから声というものがなく、笛だけだったなら、100wpmもしくはそれ以上のスピードでやりとりできたでしょう。私が保証しますよ。すべては動機の問題です。」「座って聞いて、理解しようとして聞き続けるのです。」「75wpm以上でタイプできる人なら、本当に望むのでしたら75wpm以上のコードをコピーすることもできるはずです」と。
 

訓練することに加えて
エキスパートになるのに必要な要素
受信中に忘れてはならない重要なことは、冷静さを保つことです。決して、あわてたり取り乱してはなりません。聞き漏らしても聞き続けるのです。高速で文字をコピーできなかったら、言葉やフレーズをコピーしなければなりません。
4045wpmのスピードで質の高いコードであればどれほど聞き取れるか、あるいはそれがどんなに楽しいことなのかに驚くでしょう。(前世代の報道のように)

 McElroyが次のように書いています。「私は’hospitalization’という単語が57wpmというスピードで送られてきたコンテストのことを思い出します。こんなスピードでどのようにして聞き取るのでしょう。しかし、30秒かそこらで、それがひょいと脳裏に浮び上がってきて回答を記入したのです。楽しんでやってみてください。」冷静に、そしてあわてたり取り乱したりしないことです。言葉の流れの中に気持ちを集中させるのです。言葉を意識的にスペルアウトする早さには限界があります。しかし、心の中で行っていれば限界を感じなくてもすむものです。気持ちをしっかりと持つことによって、熟練者がさらに上達することは確かですが、経験が少ないと、かえって混乱したり聞き漏らしたりするものです。
 

誰ができるのですか
イギリスに、盲目でほとんど耳の聞こえない
23才の若者がいました。彼は、50wpmでコードを扱うことができました。彼にとっては、これが唯一のコミュニケーションの方法だったのです。1959年に、KH6IJであるKatashi Noseさんが次のように書いています。「Derたるもの最低60wpmはできないといかん。そしてコールバックしてきた相手のスピードに合わせるんだ。」前に書いたように、Bill Eitel100wpmで容易に交信することのできる一人でした。これは、それくらいのスピードで彼と交信できるハムが他にもいたにちがいないことを意味しています。

 いろいろな所で行われてきたコンテストやスピード記録の何年か分を調べてみますと、より高速のスピードでコードを聞き取る能力というのは、成長し続けるものであるというように思えてきます。これは、機械の発達や学習法の進歩、あるいはこれら両方のおかげによるものと思われますが。高速のコードではより正確なコードが必要とされます。おそらく、いつの時代でも、高速でコードを扱うことのできる人というのはたくさんいるのですが、忙しいために、公式には知られていないだけなのだと思われます。

 1845年、電信技師のスピードはおよそ5wpmでした。18551869年には2025wpm、最高で46wpm1875年には52wpm1897年には63.5wpmに達しました。McElroy1920年に51wpm1922年に56wpm、そして1935年には69wpmに、1939年には75wpmにまで達しました。 他の記録によりますと、1937年には4人のハムが55wpm1938年では2人のハムが65wpm、そして1945年には79wpmのハムがいたそうです。

 1970年代半ば、あるハムのグループが次のようなことを見つけました。「コードを解釈する能力は、送信する技術を遙かにしのいでいるために、35wpmといったゆっくりとしていて欲求不満でいっぱいの交信は、だんだん物足りなく感じるようになるのです。」それから、彼らは市販のキーボードを購入してお互い、おしゃべりを楽しみました。彼らの会議のスピードはおよそ67wpmでした(もちろん、頭の中で理解します)が、調子のいい夜には80wpmに達することもありました。」しばらくして、彼らの仲間に入った人達がこう言っています。「キーボードを買ってきて、3ヶ月以内に3565wpmに達しました。」「彼らが、特別に利口なやり方をしたとは思いませんが」

 周りのものは、このグループの人たちをモールスに関して、特別に才能を持った人たちのグループであると感じていました。彼らは、コードをたやすく理解することができましたが、他の人たちがどうしてそれをできないのかが理解できませんでした。どうしてできないのでしょう?これらの人々について、現在では詳しいことは何もわかりませんが、何か特別な才能を持っていたのかもしれないということが考えられる一方で、優れた指導者からためになることを得たのではないかと考える、あるいは上達する過程でおこす単なる失敗などではペナルティを受けないといった、強い動機付けがあったのではないかと考えるもっともな理由があるのです。ともかくも、彼らのすべてが特別な能力を持っていたようには思えませんよね。彼らが特別、何か変わったことをしたとは思えないという事実から、彼らは技術習得の際に、いきなり上達したのではなくて、スピードを徐々に早めていっただけだということが予想されます。これはよく考えなければならないことですね。

 コードを使うことに従事する機会が多ければ多いほど、その人は高速符号の扱いが楽になります。 Ted McElroy は遅れてコピーする技術をしばしば披露しました。彼は、数秒間、何気なくコードを聞いた後で、送られてくるコードに近いスピードでキーボードを打つことができると言われていました。この特別な能力を多くの人が発揮できるとは思われません。たいていの人は、符号を聞いたらすぐにコピーする傾向があり、遅れ受信といっても2,3音節/語遅れてコピーするのがせいぜいです。(このことについては、1939年のコンテストについて書かれたMcDonaldの文章に見ることができます。26章参照)
 

アマチュアの高速クラブ
 ヨーロッパのCW連合が19615月、CWの使用促進をはかるために設立されました。その中でメンバークラブが発展していきました。
主なものは以下のとおりです
High speed club_設立は1951年、25wpmが必要、
Very High speed club_設立は1960年、40wpmが必要、約280人で構成、
Super High speed club_設立は1983年、50wpmが必要、約200人で構成、
Extremely High speed club_設立は1983年、60wpmが必要、75人で構成。

 同様の高速CWクラブはアメリカにも存在します。CFO(Chicken Fat Operators)CWをこよなく愛するハムの集まりとして、アメリカで1980年頃に設立されました。彼らは40ないし45100wpmくらいのスピードで、キーボードを用いて美しいCWをたくさん送信し、長いラグチューを楽しみます。間もなく、メンバーは世界中でおよそ700人になりました。そして、10年後にはおよそ900人となりました.。(アメリカ時間で夜中、あるいは週末の7033kHzあたりを聞いてみて下さい。)彼らはQSOの終わりに、鶏の鳴き声をモールスで送信していることで確認することができます。この音は、WS9DであるKirbyが発明した音響装置でつくり出されます。彼らは、ハムフェスティバルやコンベンションの‘Cluck-ins’で会います。会員になるには、キーボードで彼らのスピードと同程度に操作できることと、会員2名による推薦が必要です。他に、Five-Starクラブという、通常80wpmで交信するクラブもあります。

 真に熟練したCWオペレーターというのは、標準的なアマチュアにとっては実に奇妙な音に聞こえるコードでも正確に理解し、筆記することができるのです。外国船では、安くてしかも信頼できるからという理由でCWが使用されていますが、そこのオペレーターはあまり訓練されていなかったり、また非常に安い賃金で雇われていることが多くあります。彼らは、手動キーを用いて、18wpm以下のスピードでモールスコードを送信しますが、非常に理解しづらいものです。しかしそれにもかかわらず、すばらしいプロオペレーターは、聞き漏らすこともなく、コピーすることができるのです。それも、同時に他のことをしながらです。

 動揺してしまうようなスピードが存在するものです。・・もう少し早いスピードで楽しんで下さい。あたかも音楽を聞いているかのように、とても早いスピードのコードを聞いてみて下さい。そうすれば、すぐにところどころ文字を認識できるようになりますから。そして、言葉が飛び出してくるように聞こえるでしょう。高速のコードは音楽的であり、また美しいものです。これは、コードを扱っている者にとって、尊敬と感嘆の念を奮い起こすような性質の物です。バックグランドミュージックや他のリズミカルな音は、高速オペレーターの助けとなることもあり得るのです。つまり、混乱させるのではなく、単調さを和らげる効果もあるのです。
 

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