無線電信の巧みと技

William G.Pierpont N0HFF

-改訂2版-

                第10章- その他の電鍵とその使い方

 

 目次    第11章
 

第9章 では正規の“ストレート”キーについて詳細に議論しました。ここでは、すべてのキーイングデバイスを考察します。

これらは次のように分類されるでしょう:

キーのすべての種類
単純な機械的スイッチの無数のバリエーションが工夫されるでしょう。考えられる殆どどんな動きの種類も,スイッチを動かすために使われます:上下,横向き,滑り,押し込み(スクイジング),ねじり,その他。それらはつぎのもので動かされるかもしれない:人の動作(指,手,腕,足,唇,首,息の圧力,その他),機械的又は電磁的動作(例えば、リレーで、第2の回路にキーイングパターンを伝える)など。

 ハンディキャップを持つ人のために,キーのある種類ではダイヤフラム又はピストンなどの上に息の圧力をかけて動かされるような工夫がなされてきています。ある興味ある最近のデザインのものは,次のような固体回路の利点を採用しています。

 a)光電セルの前においた指打ち(フィンガータッピング)による,光ビームの遮断。

 b)固定した金属板に近づくかあるいは軽くタッチするよう指を動かすことで生じる容量又は抵抗の変化。

 c)超小型マイクロホンのレンジ内で,人のハミングのトーンをモールスコードにする.そしてキーイングをコントロール可能な他の方法。

このようなデバイスの分類はどうすればよいでしょう?
 

手動キーの他の種類
“ダブルスピード”キー-“サイドスワイパー”「複式電鍵」

初めて“サイドスワイパー”が出現したのが正確にいつかは、知られていないようです。

それは横向き手動機構がより易しく、恐らく上下の動きよりもより速いというアイデアに基づいています。

Jerry L. Bartacheckによって発見され、その好意により提供された記録によれば、KD0CA,J.H.Bunnell Co.が、新しい“ダブルスピード”キーとして1888年に特許を取得し、それは電信通信士の麻痺いわゆる「手崩れ」"glass arm"を克服するために開発されたといわれました。今日、このタイプの苦悩は“手首トンネルシンドローム”と呼ばれています。

この新しいキーを使った人々は、その主張が真実であるとわかりました。-横方向の動きは,よりずっと快適であり、自然です。そして「手崩れ」の危険を防ぐか又は大いに減少させました。

このキーは一時は流行しました。そして、しばしば“サイドスワイーパー”または“クーティキー” "cootie key"(まぬけな、シラミ?)と呼ばれました。しかしながら、Bunnell のキーは,どちらかというと高価で、そして真似され易いものでした。

 それを使って、オペレータは,一方の側から他の側へ交互にキーレバーのパドルを動かすために、親指と人差し指を使いました。‥それぞれの方向で回路を閉じ、右へ左へのどちらにも動かしました。この方法では、それぞれのキャラクタのために継続する短点と長点を形成しました。例えば、もしオペレータが左へキャラクタの第1要素を形成したとすれば、それが短点あるいは長点のいずれであっても、次の要素は右に作られました。そんなふうに、動きのパターンは左-右-左-右-左-右 又は右-左-右-左-右-左のように交互になりました。

 この後と前への動きは“サイドスワイパー”の用法に背いて,しばしばそれ自身のある種の妙なリズムになりがちです。

 少数のオペレータは「手崩れ」でもって障害され,90ー回したストレートキーに転向することにより,単純に救われることを発見しました。それは一方向の横向き動作でもって使用されました。(この使い方は既に横向き動作を使っているバグ又はキーヤーで簡単にできます)

 商業的に作られたダブルスピードキーはVibroplexに比較して安いものでした。そしてよいホームメードのものを作るのも本当に簡単でした。ですから無線の操作で、特にハムの間で幾年かの間、ポピュラーになったのは不思議ではありません。(有線通信士によって多く使われたことはなかったようです)多分、その目新しさ自体が、そのより高速度で疲労を低減するという主張と同じように大きい魅力であったのです。
 
ダブルスピードキーはセミオートマティックキーのアイデアより遅く導入されたようです。その最初のよい商業的バージョンは
“Vibloplex”が1904年に導入し,そしてすぐ広くプロの(コマーシャル)電信通信士によって使われ始めました。

 1926年のつかの間の興味は、2つのプッシュボタンを持った同じようにつながれたキーでした。タイプライタキー又はプッシュボタンのように2つの指で使われ、その製作者によって“クリケット”と命名されました。このキーは“サイドスワイパー”のように,文字を形成するために交互に使われました。結局それは全然人気がありませんでした。
 

「バグ」
歴史的には1906年に
“Auto”として紹介されたMartinセミオートマティックキー、後の“Vibloplex”-一般に“バグ”と呼ばれている-は、そのより機械的な複雑さと用法の差異のために、ここでは第2番目にリストされています。

特許を受けたVibloplex は自動的にドットを作ることにより(その弾性的なマウントアームの横方向振動によって)、オペレータの労力の多くを軽減し(たとえ彼がまだ、手動で長点を形成しなければならなかったときでも)、そして、一方で「手崩れ」の危険を減少しながら、彼のスピードのポテンシャルを増加させました。(横方向の動きと親指と他の指の間での労力の分担により)その色々なモデルの中で、大変ポピュラーになり、そして広く現在に至るまで使われるようになりました。多くの模造品があり、それらのいくつかはまた、自動的にダッシュを発生しました。ノーマル(右手用)モデルは親指の右方向の動きで自動的に短点を形成しました。そして1本か2本の指をパドルの反対側に添えて左方向の動きで手動で長点を形成しました。ある製作者によるある生産設計は、第2振動アームによる自動的長点発生機能を備えていました。

 オーストラリアの有線では,バグキーは“Jiggers”として知られていました。これらはSyndney GPO Telegraph Officeにより1946年に供給されましたが、それは3つのノブを持っていて、そのうちの2つは分割したスウィングアームをコントロールし、その1つは自動的に短点を形成し、そして1つは長点の自動発生のためにあり、そして第3ノブは手動的に長点をコントロールするためにありました。これらのノブは、右利き又は左利きの人によって易しく使用されるために、ベースプレートのどちらか一方の端に置くことができました。私はこれらが、どのように使われたかについての情報を持ち合わせていません。
 

バグの使い方
“バグ”はテーブル上でスリップすべきではありません。そして、そのパドルはテーブル面の上約2と1/2インチにあるべきです。多くの教師は軽いタッチを推奨し、小さい指の指関節の上に手を旋回しながら、そして指動作と回転腕の動きの組み合わせで使用しています。(しかしながら、往年のスピードチャンピョンであるTed McElroyは、腕と肘はテーブルから離すべきだといい、そして使われる腕の完全なフリースイングといっている)われわれは、いくつかの違ったスタイルが同じように満足であると感ずるかもしれません。(一方で、送信しながら、同じ手に鉛筆を保持することが、リラックスして学習するのを助けるだろうといわれている)。

 バグ送信は、よい手動電鍵操作をコピーすべきです。それを気軽に扱いましょう。そのパドルを握らないで、指があなたがプレスオンしている側に接触することを許すだけであり、- 他の側に接触しないことです。バグが無線業務に使われるとき、相対的に非常に軽い(短い)短点を形成する傾向があります。有線電信送信と比較して、無線は空電と干渉の中で信号を確実に届ける為にはより重いスタイルが必要で、そのためにより重い設定のキーが一助となります。そこで、普通の空電又は干渉くらいで信号が呑み込まれないよう、充分な重みのある短点になるようセットしましょう。

 

バグの調整
すべてのキーがそうであるように、バグの調整は大いに個人的なことがらであり、オペレータごとに変化があります。それはまた、速度の範囲に敏感です。例えば、35wpmの操作の為にセットされたバグは18wpmにおいては、うまく動作せず、逆も同じです。‥ルールを思い出してください:他のオペレータのバグを決して再調整してはいけない!

Hugh S. Pettis, K3ECは最適なバグのセッティングとして次のように推奨しています:

 彼は正しい短点長(1短点は1スペースと等しい)をセッティングすることに対して、バグの端子に抵抗計(アナログメーター)をつなぐ共通のテクニックを引用しています。始めに、長点コンタクトに対するパドルを押してている間に、それをフルスケールにセットします。それから、短点の連続に対し、スケールの読みが半分になるまで、固定短点ポストコンタクトを調整し、そして最後にフルスケールの読み-閉回路-に安定する。彼の個人的好みでは、先細りする短点は約10短点の後に閉回路になる。より多くの短点は、より軽い設定ということです。そして、もし、(短点の)連続の後で回路が開いたままなら、それは設定が軽すぎます。より少ない短点がより重い設定を作りだし、そして、もしそれが8より少ないならば(8短点の)いわゆる訂正符号は作ることができません。

Robert. R Hall W9CRO は推奨しています:(幾つかの調整は相互に影響している)

 

バグによる送信
スムーズに易しく、最小の労力でもってキー操作します。バグにそれをさせましょう、-あなたはテーブルの上に腕を休ませながら、パドルにゆるく(軽く)親指と人差し指でもって触れながら、それをコントロールするだけでよいのです。手や指の大きな動きなしでコントロールしましょう。腕の少しのねじり又は回転で短点、長点を変えます。リラックスしてそれを楽しみましょう。決して短点と長点を親指と他の指で迎え打たないことです、そうすれば長短点が広く離れ、強くたたくことになり、バグが左右に動いてしまうことになります。

 あるバグユーザーの間には、手で形成される長点とスペースに対して、早過ぎる短点をセットする目立った傾向があります。手が形成するスペースは比例的に長くなり過ぎるようになります。

この結果、時として不規則(choppy)な符号、あるいは確かに了解はできるが、しかし聞いたり読んだりするのにうんざりしてしまう符号になってしまいます。Katashi Nose KH6IJは「高速では、パドルに多くの力を入れることができない」と指摘しています。彼はまた、「もし、あなたがその全部の腕を動かすならば、慣性の法則はあなたをハイスピードを達成することから妨げる」といっています。
 

キーヤー
キーヤーは
“バグ”と同様パドルによってコントロールもので、短点と長点両方を自動発生するための電子機器であり、そして、バッファーとメモリを含んで、他の有用な操作上の特徴と組み合わされることがあります。多くのものは“スクイーズ(squeezing)”動作による“アイアンビック(iambic)”機能を含んでおり、送信をさらに自動化して、交互する短点と長点を自動的に発生でき、これによって総合的労力を減少できます。アイアンビックキーヤーは、たとえそれらがわれわれのコードで使われなくとも、常に完全なキャラクタを発生します。

 Katashi Noseは「もし、あなたが既にバグをマスターしているならば、電子キー送信に変わるのに3週間かかるだろう。一旦転向したら、あなたは鍵をかけられるだろう、なぜならば、その時あなたのバグとしての腕(こぶしfist)は破壊されている(編者注:多くの人々の場合);両者は全く異なったテクニックが要求される。」と云っています。もし、あなたのキーヤーが“強制キャラクタスペーシング”(FCS)を持っているなら、それを使いましょう! これは数週間の練習を要するかもしれませんが、理論上考えられるもっとも正確な符号と同じもの送ることができるようになるでしょう。やってみるだけの価値はあります。
 

キーボード
 最後に、キーボード(キーボードを使うためのプログラムでの電子計算機の使用を含む)はタイプライタ型のキーボードからすべてのキャラクタを自動的に作ります。キーヤーもキーボードも、コードを学習したり、能力を増進するための指導プログラムやその他様々な用途のメモリーを持っていることが多い。そして、コードを学習するためのプログラムや、いろいろな目的のためのメモリなどを含んでいます。これはコード生成に関してはほぼ最高のものでしょう。(このCWを送るマシンは、QRPのときなど信号が非常に微弱なとき‥そして非常に高速で通信するとき(手送りでは太刀打ちできない)に了解度を良くするために「必須」です。)

 キーボードは、またビギナーが初めてコードの学習を始るときや、スキルを増進ために活用できます。ハンドキーの早さでは役不足です。

心理的テストは人が指を軽くたたける平均的レートを示しています:-

 高速では :毎秒9.7回 即ち毎分576回(300回/31秒)

 平均   :毎秒8.6回 即ち毎分516回(300回/35秒)

 低速では :毎秒6.7回 即ち毎分402回(300回/45秒)

 1つの短点が1つのタップ“tap”であり、1つの長点が2つのタップ“tap”と同じである(2つのパルス脈:1つはダウンそして1つはアップの)と仮定すれば、そのとき以下のようにいえます:
 

 

タップ

文字

文字グループの頻度

タップ x 頻度

1

E

0.130

0.130

2

T I

0.166

0.332

3

A N S

0.214

0.642

4

D H M R U

0.192

0.768

5

B F G K L V W

0.124

0.620

6

C O P X Z

0.139

0.834

7

J Q Y

0.024

0.168

1文字平均

 

1.000

3.494

5文字構成の単語の平均値 = 17.47 タップ (3.494 x 5)

このレートのままでメッセージやニュースなどを送信できると仮定したとき、送信速度は最低速で23wpm、平均30wpm、最高速で33wpmということになります。
 

興味あるバグ
オーストラリア シドニーのGPO Telegraph Officeでは、1946年に短点と長点のための2つのセパレートスイングアームをもっているバグを生産しました。これは3つのノブがありました:短点について1つ、自動的長点について1つ、そして手動的に制御される長点について1つです。これらのノブはベースプレートのどちらの端にも置くことができ、右利き、左利きの人に容易に使えるようになっていました。
 

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