無線電信の巧みと技

William G.Pierpont N0HFF

-改訂2版-

モールス符号の習得

概論-我々は何処に行くのか

 


 

もしあなたが、ある種のマジック、秘密、トリック--あるいは催眠術--といった類いのものを、ここに期待されているのであれば無駄なことです。

我々が提案するのは実質的な、実証経験された、長年にわたるどうすればモールス符号が効果的にうまく習得できるかの研究の長所を集めた方法です。

長年ARRLでモールス符号の達人であった

George Hart氏は次のように述べています:「符号の習得で最大の障害はそれに用いる方法である。」

教師であり長年モールス符号のスピードチャンピョンである

Ted R. McElroy氏は、一般的な人であれば誰でも容易に毎分25語を達成できると言っています。これは、容易に達成できるリーズナブルなゴールです。このスピードを心地よく扱える者は優れたオペレーターです。

1845年、初期のアメリカン・モールス符号は、電信線を通してあらゆる種類の記述されたメッセージや情報を文字、数字、句読点まで一字一句完璧に送信する目的で考案されました。符号は紙テープ上に揺れ動く線として記録され目によって解読されていました。じきにオペレーターは記録器のノイズから耳で正確に聞き取ることができることを発見し、間もなく音響器が徐々に記録器と置き換わっていきました。

符号を耳で聞き取ることの発見からそう経たないうちにオペレーター達は、今日のアマチュアがラグチュウするごとく、仲間同士で容易に電信で雑談を交わすまでに上達しました。そのような自由こそ我々の目指すべきゴールです

コミュニケーションのための容易で自然な符号の使用、我々が普段読んだり話したりするのと同様の使用。そこが我々の目指している方向です。

符号は新しい言語ではありません。

それは皆さんがすでに知っている言語です、但し紙にインクで書く代わりに音声のパターンで「書かれた」- 皆さんの言語です。皆さんがすでに目で大変上手に読むことが出来る言語を耳で「読む」ことを覚えるのです。

 

レッスン1--次のように考えることが非常に大切です:--各文字、数字、記号に対する符号はそれぞれ特有の音声パターンからなっている。

心理学では、何か新しい事を習得しはじめるときもしそれが「容易」な存在であると考えればそれは容易になる、と言われます。

最高の先生は生徒に符号習得に関して何か難しいことがあるとは決してほのめかしたり思わせたりしません、そうすることで生徒は符号を早く習得します 通常1週間か2週間で。彼らはまた符号習得を楽しいこととして教えます。 楽しく- 愉快なこととして符号習得を考えること:そういう考え方をすれば習得はより早くなります。「習得したい」と思うこと- そうすれば習得できます。

基本はアルファベット、数字、句読点です。

これらの音声パターンを、例えば「ツーツート」と聞いたら即座に「G」と認識できるようによく覚えるのです。 これは基本です、でもここに留まってはなりません。 符号はコミュニケートするためのものです:われわれは文字(letters)で話しません、語(words)で話します。語(words)は最も小さい思考の単位です。 たとえアルファベットをマスターする途中でも、簡単な良く使う「語」の認識の練習を始め、"the""of"などを聞いて「語」として認識する練習を始めることが出来ます。

我々(人間)は読むことを習い始めるときには話すことはできているものですが、読むことは新しいことなので、覚えるには何がしかの努力が必要なのでした。先ず個々の「語」を書き下さ(スペルアウト)なければなりません、それからそれをどう発音するのか考え、次の単語に取り組みつつすでに解読できたことを記憶し、これを繰り返し文章全部を苦心して「読む」のです。符号の学習の初期段階もそれと同様ですがその方法に留まる必要はありません。単語は文字の一連の繋がりです。でも、われわれは一文字一文字読むわけではなく--「語」を読みます。

もしスペルアウトできなければ書くこともできません--さもなければ象形文字を使う必要があります。 モールス通信において「語」は思考の単位となる必要があります、なぜなら「語」は意味があり記憶するにも容易であるからです。

「語」を文字の繋がりとしてスペルアウトする代わりに「語」自体を認識することを習得すれば、印刷物を読むように符号を読むことが、より簡単で早くなります。賢明な読者は「語」を読み、語の繋がりさえも一目で読みます。他の多くがやったように、我々もそのように学習できます。そうすれば「語」を構成する「文字」そのものはほとんど気にしないで、容易に「語」を読むことができます。

我々の関心は印刷物に書いてある「考え」にあり、我々はそこに表現されているアイデアに反応するのです。

モールス符号でこの段階まで到達しはじめると、達人になり始めているといってよいでしょう。そこで我々の計画をまとめると、

・音声パターンのアルファベットを各文字が即座に認識できるまでよく覚え、それから

・耳にするほとんどの単語を「語」として認識することを習得し、そして最後に

・符号の流れをあたかも誰かが語

(word)と思考(idea)でおしゃべりしているように聞き取ることを習得することです。

受信しているのがどんなスピードであれ、熟練とはこのような状態を指すのです。どんなスピードでもこれが出来るように習得することが出来ます。

我々のゴールは読み、語る、のと同じように容易に自然になるまで符号を使えるように習得することです。
先頭   目次   第1章