無線電信の巧みと技

William G.Pierpont N0HFF

-改訂2版-

第31章 いわゆる「ファンズワース」法(スペース法)

   
第30章     目次     第32章
 

この方法(学習の初期段階における、文字パターンと単語の認識向上のために、文字・単語間のスペースを広げた)はあきらかに優れたものです。

これは、本当はファーンズワースよりもずっと以前から多くの教師が使った古い手法です。 最初にこのアプローチを明確に述べたのは1902年、彼自身優れた電信士だったトーマス・エジソンです。 アメリカンモールスコードを教えるための「オーディオ アルファベット」(by Frederick J. Drake & Co.)というパンチテープを書いているときに、彼はひらめきました: 符号を聞かされて戸惑うのはそのスピードのせいではなく、符号が次々に立て続けに聞こえてくることだ。

ある教師によってこの方法は、スペースを狭めることで速度を上げるような教え方をされ、文字が連なって聞こえたため、一部の生徒は一時的にリズム認識が問題になってしまいました。彼らは少し挫折を感じたでしょう。 しかし、そういうことは避けられます。

この方法による効果は13wpm程度の速度を使用するときに最も顕著になります。 それが、18~25wpmの速度を極初期の段階から使うことを勧める理由です。 これくらいの高速であれば、文字を1つの音の単位として捉えやすく、短点と長点の集まりであると考えることもありません。 (勿論、符号を習得した後は、最初に学習した速度よりも遅い場合も含め、様々な速度で聞く必要があります。 因みに、通信術の試験は遅い例です。)

この方法は初心者に最初から符号が音の1単位に聞こえるように早い速度の符号を聞かせることから始まります。 (これは、少なくとも12wpm以上の速度を意味します) これを強調し、各文字・各単語を明確に認識するするために必要な時間を与えるために、文字・単語間のスペースは最初非常に広くとられます。 そして、生徒が上達するに連れ、間隔を狭めて行きます。  心理学で証明された実験によって、刺激が一つの単位、全体すなわち「ゲシュタルト」、として捉えられれば、習得は早くなります。 このコースをどの様に扱うかに関して、彼は次ぎのように補足しています:「オーディオ・アルファベットの主な特徴は文字間隔からの脱皮です。 最初は広い文字間隔のレコードで始めて、だんだん間隔の狭いものに変えていきます。 生徒は次第に通常の符号スペースに達します。

このスペーシング法は、初心者がゲシュタルト(一体)、各符号の個別の形、の把握のための、恐らくもっとも明確で効果的な方法です。 それは文字の音声パターンを、他の干渉や妨害を最小にしながら、対応する印字文字に焦点をあて際立たせます。

これは本当に多くの教師たちの経験に基づくずっと古くからの手順で、ラス・ファ-ンズワース (W6TTB)の名が付いたのは、3枚のLPからなるイプシロン・コード・コースのレコードが1959年に発売されてからです。 そのコースでは、最初から13wpmの速さで、広いスペースから、生徒が上達するに連れて、狭くなりました。 つぎに見つけた記録によれば、1917年と1918年に連邦教育委員会が出版した広報に、各文字を20wpmの速さで広いポーズをとって送信するよう推奨しています。

1922、3年頃ポピュラーだった「RADIO SIMPLIFIED」の11章で、著者 Kendall Koehler(それぞれフィラデルフィアのYMCA無線技術学校の指導教官と監督だった)は、符号学習について書いています: 始めるにあたり、初心者は符号の短点と長点を数えてはなりません。例えば、「長点-短点-長点-短点」イコール「C」と考えてはいけません。 それは多大のエネルギーの無駄使いです。 無線オペレータはたくさんの短点、長点を文字として認識しているのではありません。オペレータは各文字を音のパターンとして認識しています。 「ツートツート」は文字「C」、「トツート」は「R」、「ツートツー」は「K」といった具合に、子供達が幼稚園で単語をスペルからではなく音で覚えるのと同じです。

彼らはスペース法を直接唱えたわけではありませんが、子供が言葉をどの様に覚えるかにたとえてそれを示しました。 これは、練習に自然とスペースを入れることでもありましたマーシャル・エンサー(Marshall Ensor) は彼の著書「無線で無線を教える"Teaching Radio by Radio"」の中で彼の有効な符号教習方法をまとめています(それは1929年カンザスのOlatheで始まりました)。 160mバンドのフォーンで毎日「放送」していた1時間レッスンの中で、何百人もの生徒に、スペース学習法を明らかに使用しました。 各レッスンは符号教習、理論、規則を交えながら講義されました。 (12章参照)

1945年 Ted McElroy は「モールス」という符号コースの無料コピーを出しました。それには「彼の30年間の運用経験が全て込められている」ということでした。 彼はこう言っています「平均的な人は最初の日に何時間も練習することを考えると、あなた方はすでに20wpmの単語と文章を最初の日にコピーし始めています。…1分間20語全てを最初はコピーできませんが、コピーして行くそれぞれの文字があなた耳をたたき、慣れるに従ってスペースは狭く出来ます。
 

先頭     第30章     目次     第32章