無線電信の巧みと技

William G.Pierpont N0HFF

-改訂2版-

第8章 コピー‐書き取り

 
 

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この章は、第7章の続きであり、7章で述べた基本事項にコピー(書き取り)による上達法を追加するものです。(もし、貴方がより確実な方法をとるなら、コピーはリスニングの次のステップとして下さい。)

私たちが文字や言葉で聞いたことを、直ぐに鉛筆と紙、又はタイプライターで記述します。 これは、耳、頭脳、手を一体化させる学習です。 手書きのコピーで、ヒアリングの全ての能力が判ります。それは、受信したものを聞き、書くこと以上のなにものでもありません。ある古い1854年の電信本に「最初は文字毎に、そして次には単語毎にというふうに書き取ることは、それを理解するのに良い方法」だと述べられています。 さあ、もう一度鉛筆を取りましょう。 電信の操作能力は、コピーで測れます。もし、貴方が(聞いたことを、正確に全てを)書き取らないなら、貴方はコピーしたことになりません。

熟練者は、聞いたことを100%完全にコピーするよう訓練されます。ほとんどの人は、手書きで約25WPMまでのコピーを修得することができます。(中には、35或いは希に45WPMまで到達する人も)しかし、それ以上のスピードになると、たいていの人はタイプライター("mill")が必要です。(タイプライターを用いること。それは文字を飛ばして直接耳からタイプライターのキーへ機械的"mechanically"に処理することかも知れません。--本章の後述を参照)同時に二つ以上の新しいことに挑戦してはいけないことを思い出しましょう。貴方は既に書き方を知っています。 貴方が手書きのコピーを行うとき、日常行っている書き方がそれを容易にします。 例えば、ブロック字体は、それが貴方にとって自然で書きやすい方法でなければ避けるべきです。 さらに、貴方がタイプライターのキータッチを修得するまでは、タイプライターによるコピーの試みを避けるべきです。

たいていの人が、コピーしている最中にコピーした内容を知りたがりますが、それは必要有りません。  コピーしたことを理解できなくとも、正しくコピーできるようになります。 (私はいつも、コピーしたことを知りたくなります。貴方は違いますか?)それが出きる人は、この葛藤をしません。彼らは、自然に出来るようになることを理解してます。

本当にあった興味深い話を紹介します。- ある夜、私は仲間と符号を楽しみながらリラックスした気分でコピーをしていました。  私は、彼にそれまで送っていた20WPMから25WPMにスピードを上げるよう依頼しました。彼は、、25WPMで送り始めたのですが、私は彼の誤解に当惑しました。しかし、とにかくコピーを始めました。驚いたことに、彼はそのシンプルなデータを声で送ったのです。--声? どんな声?  彼は、文字と数字の混じった明瞭な符号を25WPMで送ったのです、そして私は、容易にコピーすることができました。あぁ!受信者は彼のモールスを符号としてではなく文字と数字そのものとして受け取っていたので全く違和感なく受信が続けられたのです。彼は、達人でした。

聞いたことを、ただコピーすること、聞いた全てを書くこと(貴方が聞いて考えたたことではなく)それは、貴方を進歩させるでしょう。 実践的なコピー能力を身につけるため、聞く能力と符号の理解力は、これらを一体化させることを学ぶことで、最大の働きをします。
 

熟知した文章で練習を

聞くときは、熟知している、しかしところどころ文字を抜いた文章での練習が有効です。 なぜなら、私たちは、既に内容を知っています。 私たちが、既に読んだ、又は書き写し、熟知しているものは、より簡単に思うでしょう。 おおよその内容を知っているとき、私たちは予測できるし、理解できない或いは聞き逃す心配をしません。それは、今後のコピーの学習において、自信を付けるのに役に立ちます。より身近な文章のコピーは、それをより容易にします。この自信は、新規の、或いは知らない文章の受信への架け橋となります。
 

エラーを気にするな

貴方にとって、コピーを容易にする条件です。 練習の時、貴方が瞬時に聞きとったことは全てコピーして下さい、そのかわりエラーは、忘れて、気にせず進めて下さい。もし、取りこぼしても、ただ進めて下さい -忘れて進めましょう。空白は、そのまま残す訓練をして下さい。なぜなら、貴方が、たとえ瞬間でも聞き取れなかった符号を考え込むと、その後の符号も取りこぼすからです。学んだこと全てが実践できるよう、体で覚えましょう。貴方の取りこぼしは、徐々になくなります、そして文字又は、単語の空白をそのまま残すことで落ち着いてできるようになります。(それは又、よくミスする文字が何をより練習すべきか指摘してくれます。)思い出して下さい、我々は時々文字や単語を聞き逃し又は理解できないことがあります。- そしてまた、送り手側にも常に誤送信の可能性があります。しかし、それらは問題ではないと考えて下さい、そしてそれができるまで継続して下さい。この訓練段階は、貴方が退屈するほど長時間は行わないで下さい。できるだけ、変化に富んだ、そして貴方が興味深いテキストを用いて下さい。

ある学生がARRLの教材について「私は、数週間の訓練で、それ以前の数年間より上達した。 なぜなら、そのコピーがより楽しく、よく理解できた。」と話しています。 ある種のランダムな5文字のグループを受信する練習は初期段階では、文字を正しく認識し、予想を防ぐのに良い方法です。 しかし、それは、意味を持たないので、直ぐに、飽きてしまいます。  この方法をし過ぎると、通常の英語をコピーしようとしたとき、5文字毎に空白があるものと錯覚してしまうかもしれません。 発見しました! 英文を逆方向に (Backward English) コピーする練習は、(ある種のコンピューターソフトにあります。)より良い方法です。なぜなら、文字グループの長さに変化があり、よくある文字構成になります。
 

貴方がより熟練したいなら

望まない人はいないでしょう。  もし、貴方がすべての文字をコピーできるなら、貴方は学びません。 しかし、3文字中2文字、或いは5文字中4文字しかとれないなら、残りの文字もとりたいと思うでしょう。  我々それぞれに、部分的に取りこぼすスピードがあります。 それがどうしました。 それは、壁にはなりません。 もっと上達したいなら、習慣になるような遅いスピードでは練習しないで下さい。

素早い反応を心がけるために、2-5wpm(又はもっと)早めのスピードで、一度に1-2分を越えない練習を維持して下さい。  これは、特に我々が現状に満足できない程度、つまり95%を聞き取るのに良い方法です。 半分以上が聞き取れるスピードからスローダウンすると、新鮮な気分で、練習を始めるのに最適の条件をつくることができます。 より速いスピードへ、向上することを心がけて下さい。 貴方にとっての最高のスピードよりやや遅めのコピーは、容易で楽しいものになるでしょう。 別の方法として、貴方の限度より2-5wpm速い短時間の練習は、貴方を挑戦的にします。 そして、わずかの後退(取りこぼし)は実質的に上達したことを示します。
 

最初に
最初コピーし始めのころは、送信された文字に沿って、文字毎にコピーするでしょう。あなたは文字を聞いてそれを書き下す、書いたらその文字は忘れて次ぎを聞く、といった具合・・。文字が送信されたら即座にその文字をコピーするやり方を長時間続けることは緊張を増します。それは退屈で疲れることです。なぜならその作業には意味がなく、多くの意識的作業が必要だからです。さらに、それを理解するためには書き下したものを読まなければならないのが普通です。(もし、コピー中に読み返していたら、信号を見失ってしまいます)コピーのスピードを上げるときは、取りそこなったところで立ち止まらないで、とにかく続けることです。

初心者は何かを失うことを恐れます。なぜなら全てを十分に早く書き留めることができないからです。彼はすべてを漏らすまいと逆上して奮闘するので、意識が入力信号に対して「後回し」になります。これは彼がある文字を未だに十分早く認識できていないことを示しています。問題はさらに悪化します、なぜなら文字を書き下すことに必要な時間と受信される符号の長さには非常に大きな違いがあるからです。 例えば、文字 "E," "I" "T" は短く、C, J, Q Y は長い符号です。1文字毎にコピーする初心者は「E」を次ぎの文字が来る前に慌てて書こうとします。「E」が2つ来り、EI、IE、TTなど短い文字が続けてきたら、逆上して次ぎの文字が来る前に書こうと試みます。上達するれば、大抵の人は25wpm程度までは1文字ごとにコピーが出来ますが、それ以上の速さになるともっと良い方法を見つける必要があります。
 

より良い方法-遅れコピー
コピーを簡単にする最初のステップは遅れコピーを習得することです。つまり、頭の中にバッファーあるいは短時間のメモリーを置き、入力信号と書き下している部分との補完をするのです。符号を聞いてそれを書き出すまでの間にたくさんの文字や単語が自動的にメモリーされ、一方で次ぎの符号が来るのを待っているという状況です。この方法は書き下しにかかる時間と符号長の相違をなくすのに有効なばかりでなく、コピー時の精神的な緊張も解きほぐします。それはクッションのようなものです。このようにして、より見栄えの言いコピーが可能になり、固有名詞などには適切に大文字を使うことなども出来るようになります。

遅れコピーは予測を絶つためにも良い方法です。それは書く前に、聞いたことにプレミアムを付けることになります。良いオペレータは単語の送信が終わらないうちにコピーを始めることはめったにありません。一回読んだことのある材料や、すでに聞いたことのある記録などで練習をはじめると、より心地よく練習ができます。何についてか何を言っているのがあらかじめ知っていることは、取りそこなうことを心配することなく安心です。

約25wpm以上になると、少なくとも良く使われる単語と音節のボキャブラリーを構築する必要があります。音節あるいは短い単語が終わるまで待って書き始める練習をしましょう。遅れ受信した以上の部分を書こうとするのは危険があります。単語は途中から長い単語に変わるかもしれません。予期しない文字が次ぎに来てあなたをびっくりさせ、単語を間違えるばかりかもっとミスをしてしまうかもしれません。(もし、40wpmでもコピーをするなら、単語単位でコピーする必要があるでしょう)一部の人達は特別な苦労無くこの能力を自然に身につけます。しかし、私達のほとんどはなんらかの助け無しではまったくものにできません。

遅れコピーはどうやって習得できるのでしょうか?特別に何か出来ることがあるでしょうか?確かにあります。始めの第一歩は:最初にランダムな2個の符号グループで始めます。グループ同士の間隔を広く取って繰り返します。書き始める前に、両方の文字が聞きとれるまで聞きます。これが簡単なってきたら、3グループで試してみます。さらに4、5それ以上と増やすのはあなた次第です。グループ間のスペースを短くして行き、最終的にノーマルスペースになるように練習します。通常のテキストを使用するもう一つの練習方法:最初の文字を聞きます、そして次の文字を聞き終えるまでは最初の文字を書かないようにします。同様に2番目の文字は3番目の文字を聞き終わるまで書かないようにします。さらに、聞く文字と各文字の間にくる文字の数を1から2、2から3と出来る限り増やして行きます。

この種の練習には短い音節や短い単語を含むようにしてもよいでしょう。(例えば頻出単語100)いずれの場合も書き始める前、そして次ぎに来るのを聞いているときに、音節あるいは単語が全て送信されるまで待つことです。これを2個以上の音節あるいは短い単語に拡大することは危険です。なぜなら、先に注意したように、予期しないものが来てあなたのバランスを崩してしまうかも知れず、次ぎに続くものを聞き漏らす原因になるからです。

興味深い例は次ぎのようなコメントです(政府の試験官が個人申請者にオペレーター免許のテストをした時のこと):「私は遅れコピーのメリットを心得ています。試験官はテストを開始し、送信を始めました、先ず 'of' を送り、さらに 'f' を追加しました。私は即座に 'off' と思い、次ぎの送信に備えました。しかし、ポーズなしに試験官は 'i' と送信したので狼狽しました。そして直ちに 'office' と先に書いて試験官を出し抜いてやろうと試みました。 驚いたことに、試験官は 'cia' と続けてきましたので、私は素早く思考を変えて 'official' と考えました。 しかし、私は間違っていました。なぜなら、試験官は最終的に 'officially' と送信したからです。先ず聞いて、遅れてコピーすることは利点があります。」1語または2語遅れてコピーするのはゆっくりしたペースです。でも遅れを多くしすぎるのは精神的ストレスになります。特に特殊な単語が来たときなど。

遅れコピーには色んなメリットがあります。丁寧で、清書したような適切な見栄えで、大文字、句読点の正しい記載が可能になります。限界より十分低い速度であれば、空電による信号の欠落や不完全な部分をうめたり、送信ミスを補ったりできます。電文の内容も遅れコピーの参考になります。(但し、数字には内容=意味がないので、遅れ無しでコピーしなければなりません)遅れコピーの目的は精神的プレッシャーと各文字毎に集中しなければならないストレスから解き放つことにあります。

最も高速のオペレータは1か2以上の音節あるいは単語を遅れコピーする必要はないといいました。スピードが上がっても、これくらいが安全な上限であると。(一部のエキスパート、例えばTed McElroyは6かそれ以上の単語を、あるいは文章全部さえも、全く問題無く遅れコピーできたようです。我々のほとんどはおそらく真似できません)文字毎のコピーは書くことに意識的作業を伴いますが、これは遅れてコピーする試みに対する弊害になります。
 

意味のあるものは簡単です
我々は頭の中に数個の数字あるいはランダムな文字しか同時に保持できません。なぜならそれらは通常、関連性が無く、意味が無いからです。音節や単語のように意味をなさないからです。単語とフレーズは文字や数字の羅列(またはコールサイン)ようりもずっと記憶しやすいものです。なぜなら、そこには意味のあるグループがあるからです。これこそ、かのウォルター・キャンドラー
(Walter Candler)、彼は多くのエキスパートを育てた、単語を単語として聞くことが効果的遅れコピーに必須であると説得した理由です。我々は文字よりも単語でコピーするほうが簡単なことが分かります。例えば、"the" という単語は数字の "9" よりも短くて済みます。

音節でも、単語でも、あるいはもっと長い表現単位でコピーすることでも、単なるこの延長です。 もし、第7章、「聞く」で紹介したように、運用できるボキャブラリー(単語に対する慣れ)を構築していれば、遅れコピーに大きく寄与します。スピードが速くなるにつれ、40wpmくらいで、単語毎にコピーしていることがわかります。さらに60wpm(もしそこまで早くできるなら)になるとフレーズ単位でコピーしているでしょう。

昔の電信士は自分たちの「アルファベット」は単語であると言ったものです。つまり、聞くなり即座に認識できる単語のボキャブラリーが豊富でした。電線を通じて聞こえてきた符号を、個々の文字ではなく言葉そのものとして聞き、なにか特別に書き下す必要が無い限り意識しませんでした。単語に慣れていたのです。ある有名なモールスコードの教師が言っているように、同じ英語テキストの符号レコードを何度も繰り返し聞くことは単語への慣れを養成してくれる。われわれは単語に慣れて、単語が符号で聞こえるくらいになる必要があります。
 

失う恐怖感を克服する
法則3-もし何かをミスしたら:それを飛ばすこと。即座に容易に認識できるもののコピーを続け、抜けてしまった穴は無視すること。じきに、その穴が埋まって行くことに驚くでしょう。もしそうすることを恐れていると、いつもコピー出来るものも出来なくなり、驚くべきことに、送信速度も(25%以上も)あがってしまう傾向があります。そうなると普通にコピーする頭脳は完全にとまってしまいます。

最初は、はっきり認識できなかった文字や単語を飛ばすのは簡単なことではないでしょう。それは、聞くことを停止するのでもなく、注目をしなくなるのでもなく、飛ばした部分をすぐに取り出せるメモリーに保管して、パニックにならずに混乱しないで、それがそこにあることを意識しないようになることを意味しています。ですから、特に練習では、文字や単語をいくつか取り損なっても、心配しないことです。

この恐怖感を単に先に進むことで克服しましょう――苦手な文字をもっと練習に含めて――そのうちにそれらの文字が呼び起こせることに驚くでしょう。なぜなら、失うことの恐怖感は遅れコピーの最大の障害なのです。キャンドラーは緊張を最小にしてスタートするための特別な練習を考案しました。それは次ぎのようなものです:短い単語のリストを平衡した2つのコラムに用意します。単語は同じ位の文字数のものが望ましい。:
a)鉛筆かタイプライターで第一コラムの単語を書き、同時に第2コラムの単語を声を出してスペルアウトします。(コラムの順番を逆にして繰り返しても良い) これを、2文字単語で試し、特技といえるまで、さらに長い単語に挑戦してゆきます。有効なバリエーションとして読み上げながら電鍵で送信することもよいでよう。
b)だれかに簡単な印刷物を各語を均等な速度と音程でスペルアウトして読んでもらいます。3つ目の単語が始まるまで、最初の単語を書いてはなりません。そして、2文字遅れを維持します。もし出来るなら、3文字遅れ、それ以上に挑戦してください。
最後に、同じことを声ではなく符号で行ないましょう。これらの練習を、急ぐことなく、失う恐怖感を持たずに、十分にゆとりを持って行ないましょう。一度に長時間しないことです:一回2分程度が適当です。
 

その他の提案 指記述
次ぎのような「コピー」を試してください:書くときのように座って、鉛筆の代わりに人差し指を使って(あるいは鉛筆を持っているように手を構えて)、符号を聞きながら紙の上に書くまねをします。動きを与えずに、「頭のなかにコピー」するだけでも良いですし、指で「書い」ても良いでしょう。いずれの方法でも、1文字毎の初心者段階から引き離してくれ、心の目に多くの文字と単語を一つの単位として見せてくれます。

一旦それが得意に成れば、文字を脳裏にイメージ化して保存すること(たとえそれが一瞬であっても)が、従来の逐次コピー方法より正確で早い、リラックスできる方法になります。それはすべて、送信された単語のイメージを脳裏から掘り起こす訓練に他なりません。その訓練は、耳、心、手をすべて調和させ自動的に反応することを可能にします。 留意すること:間違いは気にしない。一度に長時間やらない。そして、練習しているだけであることを忘れない。字分自身にチャンスを与えましょう。タイプライターでコピーを練習するときは最初はゆっくり始めましょう。 最初は大文字でも小文字でも、混合でも使いやすいほうでよいでしょう。  昔、タイプライターが実用化されるまでは、モールス電信士はペンとインクを使ってきれいな手書きで、30~35wpmまでコピーしました。それは確実で、そのまま配達できるものでした。本当に良いオペレータは後にタイプライターを使って、50~60wpmをコピーしました。ほとんどは、5~6語遅れてコピーしていました。   (OT bulletin  Jn 92 p 13)
 

どれだけ練習すべきか?
コピーの優れた能力を得るまで、一度に余り長時間やるのは避けましょう。しかし、一旦その能力を得れば、疲れない限り長時間コピー練習するのは良いことです。ある程度の速度のコピーが出来るようになれば、長時間コピーの練習は有用です。なぜなら、疲れてくると、我々の潜在意識が短点と長点を変換して、文字を推測するためにおこる精神的ストレスを感じなくなるからです。この状態になると、ページ毎のコピーといった状態になり、そのなかの1つの文章などは気になりません。
 

フェーディング、ノイズ、混信、下手な送信
かつて、全ての船舶がスパーク送信機を使っていた頃、150マイル先で他の船舶が送信しているとき、1000マイル離れた船舶からの送信をコピーするには相当の集中力と技能が必要でした。ノイズ同士がぶつかり合うと本当に受信が困難でした(しばしば、符号の一部のようにも聞こえたため)。弱い局を空電、混信、減衰の中からコピーするのは一種、巧みの技とでもいうもので、会得するには極めて時間を要しました。それは、オペレータに最大の労を要求しました、しばしば受信機を再調整したり、極めて受信が困難なかで脱落した部分を補うために最初からやりなおしたり・・。信号の減衰は戦いでしたが、練習としては、ためになります。聞いたことをコピーし聞けなかったことは放っておくのです。失った音は無視することを覚える一助となります。

品質の良い送信と実際のオンエアでの受信はコピー能力向上に明らかに効果があります。きちんとした25wpmがコピーできるオペレータも空電や混信の中では15wpmが精一杯に成ります。空電がひどければ情報の大きな塊をそっくり見失うことがあります。熟練したプロオペレータの中には、他のオペレータが再送を要求したり、我々なんかには目的信号すら確認できないようなひどい空電、混信、減衰の中でも、正確にコピーできる優れた技能の持ち主がおりました。彼らはそれが仕事でした。それこそが技能であり、CWでこそそういうことができました。あるハムはこれを技能的に習得しました――彼らは絶えられないようなバックグラウンドノイズ、S/N-10dBkそれ以上の悪条件、でコピーすることを習いました。

ひどいコンディションの中から弱い局を聞くことを習得するには練習あるのみですが、強力な局の中に葬られた弱い局をコピーすることは習得できます。これは、本当に驚異的な人間だけがなせる能力です。強烈な障害状況の中で信じられないくらい弱い局をピックアップするのです。それには集中力が求められ、腕の言いオペレータはこの技能をある程度会得していました。いいかげんでへたくそな送信の場合は話が違います。50wpmをコピーできる有能なオペレータでさえ、変なスペース、変なリズムや変なタイミングの符号は10wpmしかコピーできません。
 

不完全なコピーを訂正する
送信側の問題であろうが、受信側の問題(混信等を含む)であろうと、一回のコピーで抜けた穴と間違いは、全体のメッセージを読み返し分析することによって、しばしば訂正できます。手がかりとなる、キーワード、節・文章の境界、単語のつながり、等を見るのです。メッセージの内容は穴埋め・訂正に非常に参考になります。単語がおかしな所は、送信ミスや受信ミスで一緒にされた文字がないかを見たりします。我々の練習を評価するときに、このような方法は、価値ある手段であり、学習を促進します。
 

その他の所見
コピーが自動的に出来るエキスパートの段階において、もっとも一般的な間違いは、個人的興味のあることが受信されているときに次ぎに来ることを予測してしまい、そしてそれが予期していないことに変わってしまった時にミスをしてしまうことだと言われています。オペレータの不足していた第2次大戦中、アフリカでは、何をコピーしているのか知らないでタイプでコピーをすることを覚えさせることがありました。英語を全く知らないアフリカ人に符号に対応するタイプライターのキーを覚えさせるのです。彼らは、すぐに符号を聞き正しいキーをタイプすることを覚え、非常にうまくなりました。

我々の場合、全ての文字と単語をコピーする必要はありません――知っている省略や略号を使いましょう、例えば、"rcvr" 受信機、"ant" アンテナ、など、あとでそれが何であったか分かれば良いのです。そして余った時間は、気楽にしましょう。

第2次大戦中、多くのオペレータは25wpmの符号郡を活字体で鉛筆でコピーするのは同じ速さの英語のテキストをコピーするほど難しいことではありませんでした。メッセージのいくつかは1時間以上かかりました。逆に、符号郡コピーに長けることは平文コピーの障害となったかもしれません。符号郡は本当に多くの(通常5)文字長でしたが、通常の平文は御存知のように長さがまちまちです。符号郡のコピーに慣れたオペレータが、平文に転向すると、文字を5つごとのグループに分ける傾向がありました。高速オペレータが大量のコピーをするときに、退屈にならないようにバックグラウンドミュージックやその他のソフトなリズムを使うのが効果的であることがありました。
 

キャンドラーの練習のためにアレンジされた頻出100語中の98語:

go  he  and  how  been  into  great about  first  their  before should  am  if  man any some very other  shall  could  which little  people  me  an  him  its  then  what every these  would there on  us out  may  like  than  by  or  not  are  well  more to  in   but  now  made  will  of  do  was had  work  must  up is  can  two  when  they  as  be one  the over  said  so  at who  for have come  she our  such  them  it  my  has  men only that all  his  time  this  no  we  say  her  your from were upon
 

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