初心者向けエレクトロニックキーヤ−の使い方
リグにエレクトロニックキーヤ−(以下エレキーと略す)が内蔵されているけど宝の持ち腐れになっていませんか? 
せっかく備わっている機能です活用しましょう。初心者でも少しの練習で正確な符号が送信できるようになります。 
まずエレキーで正確な符号のリズムに慣れてから縦振電鍵やバグキーに挑戦するのも良いと思います。

1) エレキーの特徴
エレキーの特徴を説明するために、まずモールス符号の構成をおさらいしましょう。
モールス符号による通信は短点(トン)と長点(ツー)の組み合わせと言いますが、正確に言うと2種類のマーク(ON)と3種類のスペース(OFF)を組み合わせたものです。
@ 短点は1マークと1スペース、長点は3マークと1スペースで構成されています。  
つまり短点と長点の比は実は1:2、長点5個打つ時間に短点は10個打てるということ。(下図参照)

黒=マーク、白=スペース
上段:短点連続、下段:長点連続

A 次に短点と長点を組み合わせて、A,B,C…の各文字を構成しますが、文字と文字を識別するために文字間隔(レタースペース)を入れます。  これが3スペース(下図矢印部分)。

上段:ABC、
下段:レタースペースが無いため意味不明

B そして、単語と単語を区別するために単語間隔(ワードスペース)を入れます。 
 これが7スペース(下図矢印部分)。

上段: I am a…とわかる
下段: Iama…?? ワードスペースが無いため意味不明

以上のようにモールス符号で通信するには3種類のスペースが非常に重要です。
エレキーを正しく使えば@で説明した短点(1マーク1スペース)と長点(3マーク1スペース)を電気的に正確な比率で作り出してくれます。 あとはレタースペースとワードスペースをきっちり身につけるだけです。 エレキーは楽をして正確な符号を送信するために開発された道具ですが、レタースペースとワードスペースはオペレータに依存します。 
それなら、パソコンのキーボード入力を符号変換するエンコーダーを使えば良いじゃないかというお話もありますが、そこまでいくとモールス符号を全て機械が送信しているようなもので、電信の面白みが減ってしまう気がします。

2) 準備
 リグの電源を入れ、ブレークイン機能はオフ、CWモードにして、準備したパドルをリグのエレキー接続端子に接続します。(長短点比が変更できるタイプの場合は3:1になっていることを確認)パドルの左側を接点が閉じるまで押すとトトトトトト…と短点の連続が、同様に右側を押すとツーツーツーツー…と長点の連続音が聞こえれば準備完了です。 
送信スピード、パドルの接点間隔やバネの強さは練習しながら自分の好みに調整しますので、最初は接点が自然に閉じたり、閉じたままにならない程度に接点間隔とスプリングを設定しておけばよいでしょう。
スピードは取りあえず12WPM(毎分60文字相当)くらいにしておきます。

3) 打鍵(パドリング)練習 
さて、準備が出来たら打鍵(パドリング)の練習に入ります。
不器用な私は利き腕である右手打ちしか出来ません、アイアンビック(スクイズ)操作も苦手なので、 以下の解説は右手打ち右手メモによる、スクイズ操作無しのパドリングのしかたに限定させていただきます。 
筆者はエレキーは楽をする道具ですから使いやすい方の腕で打てばいいし、打ち方も正確に打てれば特にこだわる必要もないと思っています。今のままで特に不自由はしていません。(負け惜しみ?) コンテストやモービル運用の時右手でメモやハンドル操作ができるように左手打ちを勧めるOMさんも多いので、これから始める方は是非挑戦してみてください。((注)最近の市販リグに内蔵されているエレキーは長短点メモリーやアイアンビック機能が標準装備です。以下の操作法は長短点メモリー付きを前提にしています。)

@ 構え方

◆通常交信時の構えこう構えなければダメというようなルールはありません。パドルがうまく操作できれば文句は無いんですから。一例を示すと、ペンを構えるのと同じようにひじから先を伸ばして机に載せます、自然に机に対して若干斜めに腕が伸びたと思います、親指と人差し指でパドルを両側からつまむようなカッコウでそっと添えます。このとき他の指は軽く自然に丸めます。小指と手のひらの側面は自然に机に載っている状態です。 机に対して腕が少し斜めに置かれているはずですからパドルもそれにあわせて少し斜めに置きます。メモ用紙もついでに同じように置いてみると使いやすいでしょう。鉛筆はメモのそばにころがしておきます。(図)
◆コンテスト・ぺディション時の構え最近はPCロギングが主流になりつつありますが、手書きでログをとりながら運用する場合のスタイルです。連続するショートQSOに対応するためペンは指に挟んだままパドリングします。(図)

A 練習
◆ 短点符号の練習親指の操作だけで発生できる短点だけの符号練習です。小学校でやった?カスタネットやタンバリンの練習を思い出してリズミカルに楽しんでください。短点「ト」は親指でパドルを軽く一瞬カチッと接点に振れるまでタッチしてすぐ離す、ちょうどパソコンマウスで1クリックする感じです。指の動きは必要最小限でOK、大げさに手首を振る必要はありません。 カチッと接点に振れてそのまま押さえているとトトトトトト…と短点の連続が発生しますから、どのタイミングで離せばよいかは、繰りかえしやってみて体得するしかありません。  
E_E_E_E_E 
I_I_I_I_I_
S_S_S_S_S_
H_H_H_H_H_ 
E_I_S_H_5_  
ここで _ はレタースペース(3スペース)を示します。 つまりE_E_E_…の場合 ト(3スペース)ト(3スペース)ト(3スペース)… I_I_I_…の場合は トト(3スペース)トト(3スペース)トト(3スペース)…といったぐあいです。ここで注意していただきたいのは、符号は全て「符号」とそのあとの「3スペース」で一体であることです。そしてエレキーの場合この「3スペース」を自分で作る必要があります。このスペース体得をないがしろにしていると、将来「あんたの符号はノンスペースで何を打っているのかわからないよ」と相手にされなくなることになります。以上に留意し、短点符号群が楽に打てるまで、スピード、接点間隔、スプリングの強さを調整しながら練習します。 繰りかえし練習して親指をパドルから離すタイミングをつかみます。早く離しすぎて短点が足りなかったり、遅くなって短点が多く出てしまうことがなくなるまで頑張ります。

◆ 長点符号の練習今度は人差し指だけで発生できる長点だけの符号練習です。タッチの仕方は短点と同じです。
T_T_T_T_T_
M_M_M_M_M_
O_O_O_O_O_ 
φ_φ_φ_φ_φ_ 
これらが楽に打てるように、スピード、接点間隔、スプリングの強さを調整します。 繰りかえし練習して人差し指をパドルから離すタイミングをつかみます。早く離しすぎて長点が足りなかったり、遅くなって長点が多く出てしまうことがなくなるまで頑張ります。

◆ 長短点複合符号の練習さて、短点と長点が個別に自由に出せるようになったら、長短点複合符号の練習を始めます。短点から長点、長点から短点に変化するタイミングを体得していきます。最近のリグ内臓エレキーは長短点メモリー機能が備わっていますから、Aの場合 親指で短点(左)側を一瞬カチッとやった直後に人差し指で長点(右)側を一瞬カチッとやって離せば、「トツー」=「1マーク・1スペース・3マーク」と完璧な1スペースを自動的に空けて符号発生してくれます。以下の符号が上手に発生できるように練習をします。
【短点で始まり長点で終わる符号】 
A_U_V_4_ 
W_J_1_2_3_

【長点で始まり短点で終わる符号】 
N_D_B_6_ 
G_Z_7_8_9_

【その他の組み合わせ符号】 
R_P_L_F_P_ 
K_X_Y_C_Q_ 
この組み合わせの符号はちょっと注意が必要です。先に説明した長短点メモリーは 1打メモリーですから、例えばツートツー(K)を打鍵する場合、長点側をカチッとやって直後に短点側をカチッとやり、最初の長点が発生し終わらないうちにもう一度長点側をカチッとやってしまうと、最後の長点は発生しません。ツートツー(K)と打鍵したつもりがツート(N)になってしまいます。どれくらいのタイミングで操作したらよいかは内臓キーヤーの回路やプログラムに依存する場合がありますので、繰りかえし練習してミスがなくなるタイミングを体得するしかありません。 

JE1TRV 谷口敦郎